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最近読んだ小説

●アンダーグラウンド/村上春樹

村上春樹の作品の中でも異色の地下鉄サリン事件インタビューノンフィクション。なにしろ分厚いということもあって敬遠するのですが(「なんだってわざわざ村上春樹が地下鉄サリン事件に関わろうとしなければならんのだ。ただのちなヤクおじさんじゃないか」)これは、読んでみるとちょっと他にはない凄みがあります。62人のインタビュイーの話から浮かび上がってくるのは、地下鉄の事件がどうのこうのということではなくって、世の中には一人一人人間がいて、生活していて、それぞれの物語があるのだ、っということでした。

村上春樹について。

この人はノーベル賞とかなんとか言われていますけれども、そんな高尚な人なんかじゃなくって、それこそ「ただのちなヤクおじさん」です。その作品はみなさんが大好きな「キャラクタものエンタメ小説、ときに伝奇物あるいはスターシステム的」っというものです。ありがたい純文学でもなんでもない。だから、その入り口は広い。そのとっつきやすい表面の下の地中にはちょっぴり寂しいけれども肯定的に出口を探そうとする深みがあります。広い入り口から入って、出るときにはちょっと狭まった、そして一段だけ高いところから景色が見えるような(宮崎駿がエンタメについて語ったように)、そういうものです。

この人が書いていることは、とどのつまり「時は取り分を取っていく。我々は多くを失っていく。好むと好まざるとに関わらず。やれやれ、だけれども、それを受け入れて生きていくんだ」っということです。それは普遍的な物語であるからこそ、多くの人に出口を示唆する。

だけれども、これは普遍的な物語であると同時に、やはり村上春樹(=ちなヤクおじさん)の物語なのです。私は、私の物語をみつけなければならない。自分のやりかたで。

アンダーグラウンドに書かれた62人の物語は、また違ったやりかたで、それぞれの出口のあり方を見せてくれます。多くの物語。そこから見えてくる物は、私の物語にもなりえるはず。おもしろいです。ちょっと軽く読んでみようかな、っという気にはなれない分厚さですけれども。思っていたような悲壮感というものはありません。

:)

チョコレート。

にゃー。